麻酔科医と痛み

手術をすることで腫瘍を切除したり、折れた骨をつないだりする為には、身体にメスを入れたり縫い合わせたりすることが必要不可欠です。
ところが人間には防衛機能の一つとして、傷や異物の侵入があればそこに痛みを感じ異常を知らせる機能が備わっています。
つまり、手術をする以上術中や術後の「痛み」というものはどうしても避けて通ることが許されないジレンマであるといえます。

まだ麻酔という技術が無かった頃、手術をするときには患者を紐でベッドに縛り付け、痛みに絶叫し失神しそうになりながらも無理矢理手術が行われていたと言います。とても恐ろしい話です。

誰しも「痛い思いをしたくはない」と、考えるものです。
手術をすることが決まったとき、多くの方が術後の痛みに関して不安を感じることと思います。
また、痛みは決して術後だけの問題ではありません。麻酔薬で眠っていても身体は痛みを感じます。その痛みが、ときに重篤な合併症を引き起こす引き金となることもあります。

私たちが麻酔管理をする上で、「痛みの管理」を欠かすことはできません。

鎮痛法の発展

麻酔科医はこれまでの歴史の中で、様々な鎮痛法を発展させてきました。(麻酔の歴史は鎮痛法の歴史と供にあると言っても過言ではありません)
現在では、優れた鎮痛薬や鎮痛法の開発により、手術中や術後の痛みは大きく緩和されています。(手術中に絶叫したり、術後に痛みでのたうち回るようなことはまずありません)

一つは、「医療用麻薬」と呼ばれる強力な鎮痛薬を用いる方法です。
モルヒネなどは、皆さんも一度は耳にしたことがあるかもしれませんが、現在日本では、モルヒネ、オキシコドン、フェンタニル、レミフェンタニルという医療用麻薬を使用することが可能です。
「麻薬」という言葉に抵抗を感じる方もおられるかもしれませんが、現在麻酔管理においてこれらの薬は欠かすことのできないものです。

また、「神経ブロック」と呼ばる方法があります。
神経ブロックは、しびれ薬を神経のそばに注射することで一時的に感覚を麻痺させてしまうという技術です。感覚が麻痺してしまいますので、当然痛みも感じなくなります。硬膜外麻酔、脊髄くも膜下麻酔、腕神経叢ブロック、他にも様々な名前の神経ブロック法があり、手術中から術後の鎮痛法としても、こちらも麻酔管理にはなくてはならない技術と言えます。

麻酔科医が得意とする鎮痛法を
痛み治療に活かす

手術中や術後に用いられるこれらの鎮痛法は、痛みと戦う麻酔科医にとって大切な武器であります。
そして、これらの鎮痛法は、手術だけではなく癌性疼痛や慢性疼痛に応用することが可能です。

当科では、山田圭輔先生を中心とし、ペインクリニック外来と緩和ケアチームが癌性疼痛や慢性疼痛の治療に当たっています。

ペインクリニック外来では、なかなか軽快しない難治性の痛みに対する治療(投薬やブロックなど)を行っています。
緩和ケアチームは、疼痛治療が必要な入院患者さんを毎日ラウンドし、内服薬やPCA(PatientControledAnalgesia=患者自己調節)ポンプの調節や痛みの評価、神経ブロックなどを行っています。
緩和ケアチームの活動に関しては、別のページ(下記)に活動を紹介しておりますので、そちらもぜひご覧ください。

痛みにお悩みの方は、ぜひ一度我々にご相談ください。

また麻酔科では、化学療法などに必要な中心静脈カテーテルを、超音波装置を使いながら安全に留置する手技も行っております。

当院は「都道府県がん診療連携拠点病院」です

金沢大学病院は、平成19年1月31日に厚生労働大臣より「都道府県がん診療連携拠点病院」の指定を受けました。
緩和ケアチームは、麻酔科医、精神科医、がん性疼痛看護認定看護師、薬剤師からなり、がんによる身体的、精神的苦痛を軽減することを第一の目的に2006年に発足しました。