手術室における麻酔業務

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金沢大学附属病院の手術室は平成17年9月より新手術室に移転し、現在は14室あります。手術室は朝からフル稼働の状態です。年間の手術件数は、脊髄クモ膜下麻酔、硬膜外麻酔、全身麻酔など麻酔科管理症例が約4200例です。
これら麻酔科が管理する手術では、1名以上の麻酔科医がその手術の麻酔を専属で担当し、周術期の管理にあたります。
「周術期」=「術前・術中・術後」でありますが、麻酔科医の仕事はやはり「手術麻酔の管理」が中心となります。

一言で「手術麻酔」と言っても、それはとても幅広い領域にまたがります。
 健康な成人から、さまざまな合併症をもった患者さん
 5分で終わる小手術から12時間以上かかる大手術
 新生児・乳幼児の手術から、100歳を超える高齢者の手術
 目・鼻・口・骨・脳・心臓・肺・肝臓・膵臓・消化管・泌尿器・腎臓・大血管・帝王切開などなど

私達が関わる手術の領域は、頭の先から足の指先まで、全身の臓器にまたがります。
時には出血が何十リットルに及ぶことすらありますし、手術中に重篤な合併症が起こることもあります。

あらゆる領域の、どのような患者さんの、いかなる手術においても、手術中の生体機能を適正に維持・監視し、起こりうる危険を察知・回避し、安全で安定した麻酔を施す、また痛みや手術によるストレスから患者さんの身体を守る。これが麻酔科医の仕事であります。「麻酔=眠らせる」というイメージが強いかもしれませんが、眠らせる仕事というよりは「手術中、患者さんの一番近い場所にいて、寄り添い護ること」こそが私達麻酔科医の役目だと言えます。
(ただ、麻酔の薬を投与して眠らせることが麻酔科医の仕事ではないのです!!)

麻酔科の布陣

手術室での麻酔科医

他の診療科では、主治医制により1名の患者さんに対し、1名の担当主治医がつきます。
外来では通院患者さんを診療し、病棟で入院患者さんの検査や手術、治療をすることで日々の診療が行なわれています。

麻酔科では、主治医制はありませんし、患者さんを入院させる病床もありません。
というわけで、麻酔科医は朝から晩までの1日の大部分を、手術室に閉じこもって仕事をしています。
当院の手術室では、麻酔科医が麻酔管理を行なう手術症例が1日に20-30件程行なわれています。手術中の麻酔を管理し、患者さんのお身体の安全を守ることが私達の主な仕事です。

主治医制はありませんが、1人の患者さんに対し1名の麻酔科医師が麻酔担当医として割り当てられます(担当は手術前日に決定します)場合によっては、(初期)研修医が麻酔介助医として割り当てられます。
(初期研修医が、単独で手術麻酔を担当することはありません。)

各症例に割り当てられた麻酔担当医は、術中から術後まで麻酔管理を担当します。
このように予定手術は、前日に割り振られた麻酔担当医と麻酔介助医によりそれぞれ麻酔が行われています(基本的に術中麻酔科医は1人なので孤独です)。

1日の手術が遅延なく円滑かつ安全に行なわれるよう、当科では1日の麻酔管理を統括する人(スーパーバイザーと呼びます)を日替わりで決めています。
スーパーバイザーとなった麻酔科医は、単独で麻酔を担当しませんが、全ての症例を統括し、緊急手術が必要になった場合の対応など、手術室の運営管理を行なっています。(円滑な手術室の運営もまた、麻酔科にとって重要な役目です)

時には、命に関わる為緊急に手術が必要になる場合もあります。
1分1秒を争うような場合でも、すぐ手術ができるように麻酔科医の配置をやりくりするのもまたスーパーバイザーの仕事です。
ときには人手がたくさん必要になるような急変(出血やショックなど)がおこることもあります。そのような場合には、麻酔科医全員が一つのチームとなって対応します。
一見、麻酔科医はいつも一人で仕事をしているように見えますが、実は麻酔科は一つのチームとして、日々の手術をこなしているのです。

外来担当の麻酔科医

安全な麻酔管理には、手術前の検査や診察結果を適切に評価し、最良な麻酔プランを立てる必要があります。そのため、麻酔科の外来には外来担当医が2~3名割り当てられます(外来担当医は日替わりです)
多くの場合、手術の2日前に麻酔科外来で診察を行うことになります。
ですので、麻酔科外来で診察しお話しをした麻酔科医が、手術の当日の麻酔担当医になるとは限りませんので、ご了承ください。
外来では、まず問診や検査結果の確認が行われます。また、麻酔管理に必要な診察を簡単にさせていただきます。
その後、当日の麻酔方法、麻酔の流れ、麻酔の合併症などについて説明をさせていただきます。

真夜中の麻酔科医

平日の夜間は、当直1名(麻酔専門医以上が担当)と宅直2名の計3名が割り当てられ、夜間まで及ぶ長時間手術や、緊急の手術に対応しています。(休日は当直1名と宅直1名の2人体制です)

週間スケジュ-ル

月曜から金曜 朝8:15~8:30

朝のミーティングが行なわれます。また、その日の麻酔管理症例の簡単なプレゼンテーションがあります。

月曜から金曜 朝8:30 患者入室~手術が終わるまで
(終わらないオペはない!!)

午前の手術は、毎朝8時30分に患者さんが手術室に入室します。
患者さんが入室される前に、麻酔器の立ち上げ始業点検や麻酔薬剤薬剤の準備などが行なわれます。

木曜 朝8:00~8:15 or 7:45〜8:15 抄読会(旬な論文の紹介)

最新の知見を共有するため、担当者が論文の概説を行ないます。

金曜 朝7:40~8:15 輪読会(若手医師のための麻酔勉強会)

麻酔中に使用される薬剤や機器は日々進歩しており、次々と新しいものが出てきます。これら薬剤や医療機器に関しての説明会が月に1、2回、行なわれています。
また若い先生向けの勉強会を行っています。

土曜 日曜 祝日

休日は予定手術が行なわれませんが、月に1度土曜日に医局会と症例検討会が行われます。医局会は医局員だけのメーティングですので研修医の先生に参加していただく必要はありませんが、興味のある先生方は症例検討会にもぜひご参加ください。症例検討会では、術中に何か問題があった症例や、教育的価値が高い症例に関して症例提示し検討します。情報の共有やフィードバックが行なわれています。

術前カンファレンス(不定期)

今後予定されている高リスク症例や、稀な疾患を有する患者さんの麻酔管理症例に対して、どのように麻酔管理を行なうかを話し合う術前症例検討会も行なわれています。