Bed Side Learning

BSLは全部で7日間の予定です。
そのうち5日間は手術麻酔の実習、2日間は緩和ケア・ペインクリニックの講義とラウンドにあてられます。

手術室実習

  • 生命維持・循環/呼吸管理・薬物動態 全てが集約した全身麻酔中の管理を学ぶ

手術麻酔の実習では2-3名ごとに1症例を受け持ち、手術室で実際に麻酔管理を経験していただきます。

  • 手術室実習前日

手術室実習前日には、翌日の担当症例が決定します。前日の間に、担当症例が有するリスクやその対応方法、麻酔プランなど、必要な知識ならびに麻酔の手順を学習してもらいます。
麻酔の準備・導入・術中管理・覚醒・抜管時の理解を深めた状態で、手術室での実習に臨んでいただきます。

  • 手術室実習当日

当日、朝のミーティングで担当症例の簡単なプレゼンテーションをしていただきます。(年齢、体重、身長、予定術式、リスクなどを簡単に話てもらうだけです。短く要点をまとめておきましょう。厳しいツッコミはありませんので、そこまで緊張しないでください)
そして、担当麻酔科医とともに手術室に入っていただき、麻酔の準備をします(安全な麻酔は、入念な計画と万全の準備なしには得られません)
患者さんの入室から、麻酔導入までの流れを実際に見ていただきます。
(麻酔導入によって、体にどのような変化が起こるのかよ~く見ておきましょう)

患者さんが起きておられる間(麻酔がかかっている間も当然ですが)、私語は慎み、真摯な態度で実習に望んでください(手術を受けるため、手術室に入ってこられる患者さんは、とてもとても不安な気持ちでいっぱいのはずです。患者さんの不安や緊張に配慮できるようになることも、大切な実習です)

麻酔の導入が終わったあとは、術中の麻酔維持、管理について担当教官と理解を深めていただきます。
麻酔の導入により、ダイナミックに変化する循環動態、肉を切ろうが骨を削ろうが、適切な麻酔管理によって得られた穏やかで安定した術中のバイタル推移は、麻酔科の実習でしかみることができません。
ときには大量出血や思いもよらない急変を目の当たりにすることがあるかもしれません。これもまた、麻酔科実習ならではの経験となるでしょう。

そして手術終了から麻酔の覚醒、抜管、退室までを、実際に見ていただきます。(手術終了が遅くなった場合は、途中で終了となる場合もあります)

実習のあとは症例検討会で各症例の麻酔経過を議論します。

緩和ケア・ペインクリニック

  • 癌性疼痛治療の基礎から応用まで、また「生と死」を見つめ考える時間

7日間のうち2日間はペインクリニックの実習になります。
金沢大学病院には、当然大勢のがん患者さんが入院し治療を行っています。
なかには、がん性疼痛と闘っておられる患者さんもおられます。
麻酔科医は、日々医療用麻薬を使いながら、手術中や手術後に患者さんが痛みで苦しむことがないよう努めています。すなわち、「痛み治療の専門家」と言えます。
この技術は、手術以外の領域すなわち、がん性疼痛や慢性疼痛の治療において大変重要になっています。
現在、山田圭輔先生を長とする緩和ケアチームが、がん性疼痛と闘う患者さんの疼痛治療を行っています。

「緩和ケア」は、決して「終末期医療」と同義ではありません。
がんが発見され、治療を行う段階で痛みがあれば、それは疼痛治療の対象となります。早期からの疼痛治療の重要性も、今からぜひ理解していただきたいと思います。
しかし、緩和ケア・ペインクリニックの実習中には、いわゆる「終末期のケア」を目の当たりにすることも当然あります。「最期の時」は、誰も避けて通ることはできませんが、「終末期の医療」について熱心に講義をしたり説明をしてくれる科というのは、実際ほとんど無いのが実情です(おそらく、どの科の実習でも、最新の治療法や手術法などインパクトの強い話しが多くなるのは当然です)

ひとたび医療の現場に出てしまうと、「生と死」が日々の仕事のなかうずもれていってしまいがちです。
「生きること」、また「死ぬこと」に関して、ぜひ一度じっくりと自分と見つめあってみてください。そして、それを他人に伝える技術もまた学んでください。
実習の最期に、「生と死を考えさえられた作品」をテーマにしたプレゼンテーションを皆さんにしていただきます。

素敵なプレゼンテーションを期待しています。(なお、各グループごとにベストプレゼンテーション賞が用意されていますので、ぜひがんばってください。)

  • レクチャー

実習の他、動脈血ガス分析、局所麻酔薬、麻酔薬を含む薬物動態学のレクチャーがあり、内容は盛りだくさんです。

クリニカルクラークシップ(通称クリクラ)

Clinical Clerkship

クリクラではBSLより一歩踏み込んだ内容を実習します。4週間の間にほぼ1日1症例のペースで麻酔管理をこなしていくので、BSLでの実習よりも点滴や気管挿管のトレーニングを濃密に行うことができます。おそらく、期間が終了する頃には「点滴・気管挿管は楽勝」となっていることと思います。また、麻酔薬、周術期管理、および医師国試の麻酔科問題の解説するレクチャーを予定しています。

クリクラの1ヶ月間を通して、麻酔の「奥深さ」や「魅力」を伝えることができれば良いな、と考えながら我々スタッフも準備、指導を行っていきたいと思っております。
また1ヶ月を通じて皆さんと話しをしたり、食事をしたりできることは我々にとっても刺激になります。

2016年 クリクラ打ち上げ

久しぶりに写真アップできました。2016年度は15名の学生さんが麻酔科の実習に来られました。
今年度も、大きな事故もなく無事にクリクラを修了することができました。実習にご協力をいただきました患者様に改めて御礼申し上げます。
クリクラの期間で学んだ知識や技術が、学生さんの将来に役立ってくれることを祈っています。また、一人でも多くの学生さんが将来麻酔の道に興味を持ってくれることをスタッフ一同祈っております。

Forus 7階 サブリナカフェテラスにて

2010年 クリクラ打ち上げ

2010年度は6名×3ターム 計18名の学生さんが麻酔科の実習に来られました。
今年も無事にクリクラを修了することができました。
実習にご協力を頂いた患者さん、本当にありがとうございました。

クリクラで学んだことが,学生の皆さんの今後に役立つことを祈っております。
また、一人でも多くの学生さんが麻酔に興味を持ってくださる様、スタッフ一同祈っておりあす。